この文書について

本文では、音楽制作ソフトウェアPureDataの導入から、初歩的な使用に至るまでを、私自身の理解に準じて書く。従って、PureDataの全容を網羅するものではないが、その導入の助けとなれば幸いである。

PureDataの導入段階においては、PC及び音楽・音響についての深い知識は要しない。特に音響の知識については、それを理解するための教育的ツールとして、PureDataを位置付ける事ができ、知識は後から付いてくるものと言える。

PureDataの大きな利点である拡張性、即ち拡張オブジェクト(External)の導入及び開発、画像処理パッケージ(GEM等)の導入、他のアプリケーションとの連携等のついては、現状その理解もないため他の機会に譲る。

蛇足だが、本文を上から順に読む必要はない。全てを読む必要も、記憶する必要も全くない。ツールの使用は習うより慣れるが早いのは言うまでもないので、興味のある部分、理解可能な部分を優先し、前後しつつ読むことを薦める。

PureDataとは何か

使用目的

PureData(以下pd)とは簡単に言えば、PCで「音を作るためのソフトウェア」である。様々な「部品」を「線」で結びつけることで、音を鳴らす仕組み(パッチ)を作り、これを操作して音を出す。

あるいは録音して音声ファイルを作成する、音声ファイルや外部から入力した音を加工する、といったことも部品の組み合わせによって可能である。この外見(GUI)は非常に直感的である(スクリーンショット
fig.1)。私見では、本当に誰でも、pdによる音楽制作を遊ぶことが出来る。一方で、pdを用いるプロフェッショナルも少なくはなく、一定の実力を持ったソフトウェアと言える。

音を鳴らす仕組みを作る、と書いた。この意味でpdは、PCの中に「楽器を作るソフトウェア」であるとも言える。部品はいかようにも組み合わせることができるので、無限とは言わないが可能性は広い。また部品の組み合わせによっては、何らかの音楽的構造を作ることもできる。広義の作曲と言えるが、この意味でpdは、PCによって「音楽を作るソフトウェア」であるとも言える。現段階では、これらが何を意味するかわからないかもしれないが、本文及び本文中の実例により、徐々に理解されると思う。

音楽の知識がなくとも音楽を作ることが出来る、と書いた。pdでは「音符」のたぐいは扱われない。反面「音符」に基づいた、例えば歌謡曲などを、pdのみで作るのは、不可能とは言わないが、他の音楽制作ソフトを用いるほうが全く効率的だとも言える。何故ならpdは「音符」を扱えないし、そもそもは「音を作るためのソフトウェア」であるから、と戻ってくる。

私自身、目的に応じて他のソフトも頻繁に用いる。pdも、まさに「メモ帳」並みに(時にメモ帳として)頻繁に用いる。ところがpdだけは、pdしか使わない場合もある。

それでは結局のところpdとは何なのか、に対する一回答として以後を書く。

リアルタイム制作環境

pdはリアルタイム(実時間)で音声処理を行う。リアルタイムとは、入力と(ほぼ)同時に結果が出力されるという意味である。従ってライブ演奏や、外部入力(ラインやマイクで入力)の音声の即時の加工(エフェクターとしての使用)に適している。音を鳴らしながらパッチを修正することも常に可能である。

また処理の自動化により、作曲に相当する事も可能である。前述の通り、pdでは「音符」は扱われず「仕組み」を扱うため、pdによる作曲は「アルゴリズム的作曲」という分野に属する。

ひとつ欠点があるとすれば、pdは概ね、非リアルタイムに処理することができない(拡張プログラムがあるかも知れない)。何か他のプログラムでは、例えば10分の音声ファイルを、半分の時間で書き出すことが可能な場合もあるだろうし、処理が複雑であれば倍以上になることもありうる。pdでは、例えば10分の演奏を記録するには、10分間にわたって録音する必要がある。

沿革

pdはMiller S. Puckette(http://www-crca.ucsd.edu/~msp/)と有志によって開発されているソフトウェアであり、無償で使用することが出来るという大きな利点を持つ。pdには、Max/MSPを含むいくつかの関連ソフトが存在するが、その沿革についてはhttp://freesoftware.ircam.fr/article.php3?id_article=5。pdの起源は、作曲家Pierre Boulez率いる研究機関IRCAM(http://www.ircam.fr/)にあるが、現代音楽はもとよりデスクトップ・ミュージックの幅広い領域にユーザーが存在する。

著作権は放棄されない(LICENCE.txt参照)がソフトウェアの改変も認められる。有志による開発とは正にこのことであり、有志あってこそpdは現在も発展しつつある。つまり発展途上であるわけだが、実用に際してそれが問題となることはあまりない。pdに関する最新情報や、本文では扱わない拡張機能についての情報は、開発者ウェブページ(http://www.crca.ucsd.edu/~msp)あるいはpd-list(http://iem.at/mailinglists/pd-list/)、The Pure Data Portal(http://puredata.info/)などの、ユーザー・開発者コミュニティにあるので、参考にすることを薦める。

関連情報

当然ながらこの文章は筆者の独力で書かれていると言うべきものではなく、Miller Puckette氏をはじめ、幾つもの情報源を参照して成立している。以下、敬意と共に主な参照先を挙げる。

英語
http://www.crca.ucsd.edu/~msp
http://puredata.info/
http://www.davesabine.com/media/puredata.asp?action=pddp
http://iem.kug.ac.at/mailinglists/pd-list/

日本語
http://psyto.s26.xrea.com/pd/
http://web.sfc.keio.ac.jp/~uta/pd/pure-data
http://nul.jp/puredata/
http://www.cid-c.org/blog/archives/cat_gemdoc.html
http://a.hatena.ne.jp/puredata/

基本
http://www.google.co.jp/

参考図書
http://www.amazon.co.jp/exec/obidos/ASIN/4501532106/