松平敬バリトン・リサイタル ~ 声 × 打楽器 × エレクトロニクス

演目:
ヤニス・クセナキス:カッサンドラ(1987)
ジョン・ケージ:龍安寺(1983)
松平頼暁:時の声(2013)バリトンとエレクトロニクスのための新版(2021)新版初演
山本和智:アンダンテ・オッセシーヴォ(2020)初演
池田拓実:ボロウド・シーナリー(2021委嘱)世界初演

出演:
松平敬(バリトン)
神田佳子(打楽器)
有馬純寿(エレクトロニクス)

2021年10月1日 (金) 19:00開演
杉並公会堂小ホール
一般:3,000円
学生:2,000円

公演に向けて    松平敬

今回のリサイタルを構成するのは、二つの大きな柱である。
一つは、20世紀音楽の巨匠による打楽器奏者とのデュオ作品、もう一つは日本人作曲家によるエレクトロニクスを伴った最新作である。
一つ目の柱となる作品として選んだのは、クセナキス『カッサンドラ』とケージ『龍安寺』の2曲。今年没後20年となるクセナキスの怪作『カッサンドラ』を私が演奏するのは、2012年のサントリー芸術財団サマーフェスティバルにおける『オレステイア』全曲演奏以来となる。ケージ『龍安寺』は、暴力的なまでの激しさと狂気に満ちたクセナキス作品とは対照的な、東洋的な間の感覚を生かした瞑想的な作品だ。
対照的な2曲であるが、『カッサンドラ』は、ファルセットと通常のバリトンの発声を交替させることによる一人二重唱、『龍安寺』は、事前に録音した音源と共演する一人四重唱といった、一人の声による擬似アンサンブルというアイデアと、終始グリッサンドで埋め尽くされたドローイングのようなメロディー・ラインという共通した特徴も持っている。
もう一つの柱となる作曲家は、池田拓実、山本和智、松平頼暁の3人である。3人ともアカデミズムとは無縁の、孤高の音楽観が際立っている。コンピュータを駆使した独特な作曲法で知られる池田には、バリトンとエレクトロニクスのための新作を委嘱した。そして、フェティッシュなまでの音色に対する感覚が際立つ山本作品(初演)、今年生誕90年を迎えた長老作曲家でありながら未知の音楽への探究心を失わない松平頼暁作品は、どちらもエレクトロニクスを伴った作品である。松平頼暁『時の声』は元来、ソプラノとエレキ・ギターのための作品であるが、今回の演奏は、バリトンの声域へ移調した上で、エレキ・ギターのパートをエレクトロニクスに置き換えた編曲版の初演となる。
神田佳子(打楽器)、有馬純寿(エレクトロニクス)という、日本の現代音楽シーンに欠かせない二人の強力な共演者とともに、未来を展望する刺激的な音楽をお届けしたい。

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